新興国では特にシェアホルダーイールドが重要に思える


連休中、「ティリングハストの株式投資の原則」を読みました。

この本では法の支配や民主主義が確立されている先進国への投資を推奨しており、これらが未発達な新興国は利益が株主リターンにつながらない可能性が指摘されています。

新興国の話のなかで特に印象的だったのは、1990年代にPER0.5(株式益利回り200%!)というとんでもない安値で取引されていたロシアの石油会社ユコスについてです。ナスダックでの取引が開始された2001年時点でもPERは1.5と非常に割安でしたが、のちに社長のミハイル・ホドルコフスキーがプーチン大統領への批判を公言し始めたことで、政府はユコスに対して巨額の追徴課税を課し、資産は凍結され、ほとんどはプーチン大統領に近しいロスネフチの手に渡ったそうです。

ユコスは極端な例ですが、先進国、特に米国と比べると新興国は企業が稼いだ利益が株主のために使われるかどうかが怪しいのは確かだと思います。現在の新興国株は相対的に低PERですが、低PERがリターンにつながりにくい可能性は意識しておいたほうがよさそうです。

この点では新興国株への投資は特にシェアホルダーイールドに注目する意義が大きいんじゃないかなと改めて思いました。

新興国では特にシェアホルダーイールドに注目したい

シェアホルダーイールド(株主還元利回り、株主総利回り) は配当利回りと自社株買い利回りを足した指標です。

株式益利回り(PERの逆数)に総還元性向(配当と自社株買いの合計額を純利益で割ったもの)をかけても計算することができます。

米国株はもともと自社株買いが非常に活発で総還元性向が高い企業が多いため、株式益利回りとシェアホルダーイールドの差が小さく、低PER=高シェアホルダーイールドということになりそうです。

一方で、新興国は自社株買いよりは増資する傾向で、総還元性向が低いイメージというイメージがあります。この場合は株式益利回りとシェアホルダーイールドの差が大きくなるので、PERだけではなくシェアホルダーイールドにも注目する必要があるんじゃないかなと思います。
(私は最近の新興国株の自社株買いに関するデータを見たことがないので、総還元性向が低いというのはあくまでもイメージです。)

もちろん、
100%-総還元性向(%)=内部留保(%)
内部留保(%)×ROE=サスティナブル成長率
と考えると、総還元性向が低いことが一概によくないとは言えません。それでも新興国ではこの内部留保がきちんと株主のために使われるかどうかが分からないと考えると、総還元性向が高いほうが安心して投資できるんじゃないかなと思います。

高シェアホルダーイールド新興国株ETF

新興国高配当株ETFは色々な種類がありますが、高シェアホルダーイールドでは私が知る限りはEYLD(カンブリア・エマージング・シェアホルダー・イールドETF)しかないと思います。国内ではサクソバンク証券でしか取扱いのないマイナーETFです。
(過去記事:EYLD(カンブリア・エマージング・シェアホルダー・イールドETF)

このETFは良いじゃないかなと思っているのですが、なかなか人気が集まらないようです。ETF.comのFund Closure Riskも「high」になっているので、実際に投資する上では繰上償還リスクが気になります。
(過去記事:ETFの繰上償還リスクについて

新興国高シェアホルダーイールドETFは存続が危ぶまれそうなので、現実的には高配当株がいいのかなと思います。

超高配当ロシア株

私は低CAPEレシオに注目してロシア株に投資しており、汚職や資産没収、経済の非効率性等によるディスカウントを加味しても安いんじゃないかなと思っています。ただ、ロシア株は新興国のなかでも特に内部留保がきちんと株主のために使われるかが疑わしいように思えます。

そのため、ロシア株はETFだけでなくロシア携帯大手MBT(モバイル・テレシステムズ)にも投資しています。MBTは利益のほとんどを配当しているので、少なくとも稼いだ利益が非効率なことに使われたりする心配はありません。ロシア株は現地源泉税率が15%とやや高めなので米国株よりも配当再投資の効率は悪いですが。
(過去記事:【高配当ロシア株】MBT(モバイル・テレシステムズ)
(過去記事:MBT(モバイル・テレシステムズ)からの配当金

ただしMBTは米国上場の廃止を検討していますし、個別株だとかつてのユコスのように政府に没収された場合のダメージが大きいので、あまり大金を投資する気にはなれません。
(過去記事:MBT(モバイル・テレシステムズ)が米国上場廃止を検討

新興国有配小型株ETF

そういう訳で、今のところは新興国の有配小型株に投資するDGS(ウィズダムツリー 新興国小型株配当ファンド)が一番良さそうかなと個人的には思っています。
(過去記事:DGS(ウィズダムツリー 新興国小型株配当ファンド)) 

DGSの自社株買い利回りはよく分かりませんが、有配銘柄に限っているので配当利回りは高いです。

また、小型株ETFのDGSは非効率な経営が行われる可能性が高そうな国営企業へのエクスポージャーを減らすことができるんじゃないかなと思うので、高配当株ETFのDEM(ウィズダムツリー新興国市場高配当ファンド)よりも良さそうな気がします。小型株効果もありますし。


新興国は先進国と比べてリスキーなのは認識しておかないといけませんが、私はそれを踏まえても新興国に強気なので、今後もDGSを中心に買い増ししていきたいと思っています。


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